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日本が日本であるために

時事、ニュース、政治、経済、国家論について書きます。「日本が日本である」ということを政治、経済の最上位目的と前提します。

 

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カレッジ・エコノミクス~ある経済学講師との問答 

 俺がまだ学生をやっていた頃の話です。
 といっても数年前の話なのですが……その頃は、まだ民主党政権が始まったばかりといった頃で、昨今では中学生でさえ知っているTPPなんてモノも、そこまで世間の注目を集めていませんでした。

 そんな時節でも、俺がたまたま受けていた授業『国際経済学うんたらⅠ』の講師は、やけに「TPP、TPP」とかしましく騒ぎのたまっていた覚えがあります。(ちなみに自らの名誉の為に言っておきますが、俺、経済学部ではないですよ)
 彼は、「経済においては、国境は越えた方が良い」と固く信じているらしく、「政治は(ズルっこい)既得権益を反映させるものだから、経済の発達にとって邪魔なモノである」という理屈で一貫していました。



 尚、この授業はあまり人気の授業というわけではなく、十名弱ほどしか受講していません。よって、互いの距離感が近く、授業は問答の応酬で展開されます。

 というか、講師は話が一区切りつくと、必ずこう聞いてきました。

「ここまでで、何か質問はないか?」

 これは、質問があったら聞いてくれ、という意味ではなく、質問をしなさいという意味です。質問が無いと怒るからです。ですので、みんな一生懸命に質問を捻りだします。

 そして、不真面目で不道徳的な俺だって、たまにはきちんと質問をしたのですよ。

「先生」

「はい、おーじ君」

「リカードモデルってのは、つまり、二国間で、トイレットペーパーの産業と紙オムツの産業があったとして、仮に両方とも相手国より上手く生産できていたとしても、自分の国は得意なトイレットペーパーを作ることに専念して、紙オムツは相手国に任せた方が効率よく生産できるって事が言いたいんですよね?」

「まあ、そういうことだ。リカードモデルは、そのことを客観的に数値で証明している大事なモデルだから、きちんと覚えておきなさい。ただ、関税があると、比較優位のない産業も残ってしまうだろう? つまり、関税というのは、比較優位のない産業の圧力が、政治的に影響力を発揮して設定しているものにすぎないわけだ」

「でも、先生。もし、トイレットペーパーを作り過ぎて、売れ残ったらどうするんですか?」

「大丈夫だ。関税がなければ、相手国に売れば良い。逆に、こちらは、相手国が作った紙オムツを買うのだから、これでwinwinだろう」

「しかし、国が違うということは、通貨が違うし、物価が違いますよね? つまり、こちらの国で売れるトイレットペーパーの値段と、相手国で売れるトイレットペーパーの値段は違うはずでしょう?」

「その通りだ。君、良いところに気づいたじゃないか。だからこそ、TPPというものが重要になってくる。TPPはただ単に関税をゼロにするだけではなく、複数の国で統一されたルールを作っていこうというものでもある。おーじ君の言った物価や為替の違いは、政治的に設定されたルールの違いによって市場が分断されているから起こることなんだ。だから、市場を大きな枠組みで統合して、ルールを統一していく事が大切なんだな。そうすれば、その圏内においては、一つのモノに一つの値段がつく、という事になり、その圏内全体を経済的に発展させる事ができる」

「なるほど。じゃあ、リカードモデルを成り立たせる為には、国の政治を越えた所での、ルールの統一が必要だということですね」

「うむ、そういうことだ」

「そうなると、一体、そのルールはどこの国のものに準拠するのでしょう?」

「どこの国、という事は考えないようにしなければならないね。その点でもTPPのような協定が必要なんだ。それぞれの国が話し合って、大きな枠組みのルールを作らねばならないのだから、どこも自分の国のことばかり考えていたら駄目だろう」

「そうは言っても、我々が『国際経済』というものを見る時には、徹頭徹尾『日本が、国際経済の中でどう国力を高めるか』という視点でいなければワケがわからないじゃないですか?」

「勿論そうだ。だが、自分の国の主張に、比較優位の無い産業界からの政治的圧力が含まれていてはならないわけだよ。それで話し合いがまとまらなければ、結局日本全体の利益にならないだろう。そして、そういった話し合いは、なるべく早く参加したほうがより有利な立場を確保できるのだよ。TPPが世界の中で大きな経済圏になるのは明白なのだから、戦略上、日本も先のことを考えなければならないね」

「そうはいっても、国を越えた所でのルール作りが、単なる話し合いで決まるとは思えません。具体的に言えば、各国、自分の国のルールが採用されるのが良いと思うに決まっているわけです。そこで、より自分の所のルールが採用されるようになる国というのは、より強い軍事力を持った国であるに決まっています。おおむね、帝国主義だろうとなんであろうと、軍事力を背景として自分の国以外にも自分の国のルールを適用させることが第一目的なわけです。そうすれば、自分の国の市場が大きくなった事と同義で、規模の経済がとれますから。つまり、経済に限ってのルールの統一と言っても、それは物理的強制力と切って切り離せない関係にある。よって、もし国境を越えた経済圏を作るのだとしたら、それはすべからく日本よりも軍事力の弱い国が相手でなければならないと思います。日本より軍事力の強い国が相手では、日本のルールを強制させることができませんから」

「確かに、十九世紀や二十世紀前半はそうだったかもしれない。しかし、現代ではそういった論理は通じない世界になっているのだよ。何故なら現在では、どの国も戦争が起こせないからだ」

「?」

「今は核兵器というものがあるだろう。よって、戦争を起こそうものなら、核兵器を落とされてしまう。実際、日本も戦争を始めて、核爆弾を落とされただろ。そういうことが分かっているから、どの国も戦争を始められない拮抗状態にある。そうなると、話し合いは、世界上で限りのある資源をどう効率的に運用していくか、という論点に集約して行かざるを得ないのだよ」

「なるほど。俺も、先生と同じ意見です」

「ふむ、そうか」

「はい。俺も、日本は早く核兵器を保有すべきだと思っています」


 この授業の単位は落としました。


(了)


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