03 «1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 05

日本が日本であるために

主に政治、経済、時事、国家論についてなどを書きます。日本が日本である、ということを主軸に論を展開していきたいです。

 

アベノミクスにおける二つの流れと、麻生太郎の重要さ(後編) 

 前回、麻生太郎大臣は、安倍内閣のなかでも、ほとんどただ一人の『ケインズ、産業政策派』であるという事を述べて終わりましたが、これはとりあえず良いか悪いかを置いておいても、事実です。

 まず、デフレという短期的な話題に際して、麻生大臣にケインズ的傾向があるのは、大臣が首相をやっていた時からも明らかですよ。
 ちょうどあの頃、リーマンブラザーズの破綻、アメリカバブルの破裂から、世界同時に金融不安が起こっていましたね。(現在とて、その尾を引いている状態ですが)
 それに対応しての、麻生内閣の経済政策は、いわゆるケインズ的な政策だったのです。(当初の財務大臣は中川昭一先生でしたね……)
 具体的に言えば、民間市場の「需要過小、供給過多状態」を、「政府の公共投資(公的需要)の拡大によって埋める」という政策です。
 おおよそ一年半という短命な内閣でしたが、麻生内閣時代の経済政策が一定の効果を上げていたというのはよく言われる事です。事実、短期的な金融信用不安(特に、グローバルに国境を越えて駆けめぐっていた短期証券)による、国内の実体経済の損害を最小限に押し留めた、素晴らしい功績だったと思います。(民主主義には評価されずに、選挙では負けて、中川昭一は死んじゃいましたけどね)


 このケインズ的政策で注目すべきは、やはり「市場経済への懐疑」の態度でしょう。


 俺は、前々回の記事で、麻生大臣の「ナチスの手口」発言に関連して、「直接民主主義への懐疑」の重要さを論じ、大臣を支持しました。
 そこで論じたような、麻生大臣が持つ「民主主義への懐疑」と「市場経済への懐疑」は、同じ傾向の態度から生じ得る態度であると、考えます。

 そもそも、『民間の市場原理』とは、「経済における民主主義」と呼ばれていますね。
 何故なら、市場においてそれぞれが行う『消費』は、民主主義における『一票』と同じ事で、その「消費(一票)をより多く集めた方が勝者である」というところまで瓜二つだからです。
 また、民主主義や市場原理に対し、全くの懐疑を抱かない人々の根底には「一人一人の人間は、おおむね合理的な判断をするはずだから、より多くの支持を得たモノの方がより正しいはずだ」という大衆礼賛の姿勢があるーーって所までそっくりです。

 昨今の世論で前提とされている「民主主義礼賛」「市場経済礼賛」といったような姿勢の下では、それらを「懐疑すること」すら難しいのが現状ではないでしょうか。
 何故、懐疑が難しくなっているかというと、「民主主義や市場原理への懐疑」は、大衆への懐疑でもあるからです。こうした懐疑は、大衆そのものから……というよりは、大衆に迎合した知識人から強い反発を受けるのです。

 しかし、民主主義も、市場原理も、「失敗する事もある」に決まってるじゃないですか。
 疑う事も許されないなんてのは、俺にはもう狂気の沙汰としか思えないです。

 ……まあ、俺の見解は置いておいて。

 麻生大臣の「民主主義への懐疑」と「ケインズ的な民間市場への懐疑」は、思想的経路としては繋がっているというのは、理解いただけたでしょうか?




※注
 さりとて、勿論、民主主義や民間市場の自由を過度に制限しすぎて、政府が国家を完全に計画、コントロールしようとするのも、経済にとって害悪以外の何物にもなりません。
 民主主義や民間市場に限界があるのと同じで、当然、政府の機能にも限界があるからですね。

 経済の究極の問題は、『政府の機能』と『民間市場の機能』の双方の力に限界がある事を見定め、バランスをとるという所にあります。
 麻生大臣は、そのバランス感覚に非常に優れていると、俺は思います。
(注、終わり)




 さて、第三の矢『経済成長戦略』といった、長期的なスパンを睨んだ経済に話を移りましょう。

 去年の衆議院議員選挙の頃を思い出してもらいたいのですが、当時、安倍首相以下自民党が明確にしていたのは、第一の矢と第二の矢である『金融緩和』と『財政出動』でした。
 そして、第三の矢『経済成長戦略』に関しては、安倍総裁を始めとして、その方向性すらもあまり明確にしていませんでした。だいたい、「第一、第二の矢の短期的な話と同時に、長期的な経済成長に関する政策も必要だよね」くらいの話だったのです。
(別に、「国民に対して、選挙前に示しとけよ」と糾弾しているのではなく、事実として。未来は不確実なので、政治家が選挙の前に全ての具体的な政策内容を示すなんて不可能ですし、その必要もないですから)

 しかし、実を言うと、ただ一人、麻生大臣のみが『経済成長戦略』は『産業政策』である旨、衆議院選挙の頃からおっしゃていたのです。
 youtubeか何かで、衆院選の頃の演説内容をお聞きいただければ一目瞭然かと存知ますが、象徴的な所としては、麻生大臣はだいたい次のようにおっしゃっておられたのですよ。

「日銀による金融政策、大蔵省による財政出動、通産省による成長戦略ーーこの三つを、政治家が役人を使って一度にやる」

 と。

 通産省というのは、経産省の昔の呼び名ですが、経産省が行うのは、「規制緩和で既得権益をぶっつぶす」ことではないですね。

 通産省ーー経産省がやるのは、『産業政策』ですよ。

 どっちかって言うと、「国内産業の既得権益を守ったり、新たな国内産業の既得権益を作り出す話」なんであって、「既得権益をぶっつぶして市場に開放する規制緩和」とは、真逆の事をおっしゃっておられたのです。


 しかし、安倍内閣が発足して、学者、評論家を介して世論の流れに揉まれるうちに、他の閣僚達は「経済成長戦略=規制の緩和」という風に解釈していきだすんですね。
 これは政治家の性質を考えた際、ある程度仕方のない事なのだとは思います。
 元々、安倍首相を始め、他の閣僚達は経済に思想を持つほど強い思い入れはありません。というか、そもそも政治家全員に「経済に対する強い思い入れ」なんて必要ありませんしね。ですから、おおむね、大衆の心理に迎合した知識人の言うことに流されてしまいがちになるというのは、この大衆社会において、ある程度仕方の無いことではあるのです。

 ただ、内閣の中には「経済に強い思い入れを持つ閣僚」が、主要な位置に少しは絶対に必要なんです。何故なら、そういった閣僚がいないと、経済がすべからく「大衆の心理に迎合したモノ」へ引きずられていってしまうからです。

 遡って考えるに、小泉政権下の「規制緩和、小さな政府」路線は、何か小泉元首相に新自由主義的な経済思想があって進められたワケではなくて、単なる大衆迎合だったのだと思います。
 つまり、何となく「既得権益がズルい」とか「官僚がムカつく」とか「政府が嫌い」とかいった程度の大衆の心理に迎合した政策が、『規制緩和』とか『構造改革』とかいったものだーーくらいに考えておいて間違いないと思うのです。(だから俺は、『リフレ、規制緩和派』をハイエク派とは呼ばないんです)


 ですから、アベノミクスが、そういった大衆迎合の波に呑み込まれていくのを、逆の立場から待ったをかけられる閣僚が絶対に必要だと、そう考えるわけです。

 その役割は、今のところ麻生太郎大臣が果たしているのだと見受けます。



 麻生大臣がこのように孤軍で奮闘できるのは、まず安倍首相の信任を得ていることが大きいです。長い間の盟友であることはもちろんですが、去年の自民党総裁選にて真っ先に為行会が安倍支持を表明して、勝利の原動力になったことも無視できません。
 アベノミクスで第二の矢である『財政出動』が強調されたことや、麻生氏に『副総理兼、財務相兼、金融担当相』というポストが与えられた事は、去年の総裁選の経緯によって麻生大臣の提言が受け入れられたものと考えるのが妥当ーーと、考えます。
(ちなみに、財務相と金融担当相ってのは、以前の大蔵大臣です。財金の分離という、これまた大衆迎合の理屈が流行ったことがあったのですが、このように一人が兼任すれば、実質、大蔵大臣ですね)

 ですから、「安倍首相が新自由主義者でけしからん」とか騒ぎ立てる人々に対しても、まあちょっと待てよと思うわけです。
 安倍首相は新自由主義といった思想を持つほど経済に強い思い入れのある政治家じゃないし、政治が大衆迎合の理屈へ引きずられるのは、ある程度仕方ないことです。そして、内閣の中に麻生大臣のような人を抱える事ができ、「大衆迎合の理屈と、せめぎ合っている」という現状が、どれだけマシな状態か考えてみるべきです。

 まあ、麻生孤軍の『ケインズ、産業政策派』は相当劣勢ですけど……
 俺としては、麻生大臣には何とか頑張ってもらって、安倍内閣の軌道を修正していって欲しいです。


 また、もし麻生大臣が内閣を去るような事になれば、アベノミクスは『リフレ、規制緩和』の流れにどっとなだれ込んでしまうように思われます。さすれば、安倍内閣の経済政策は、酷くバランスを欠いたモノになっていくでしょう。

 麻生太郎に代えは利かないのです。



(了)



※お読みくださってありがとうございます。少しでも記事にご賛同いただけましたら、ランキング、ツイートなど、ご支援いただけたら大変ありがたいです。どうか、お願いいたします。
また、いつもご覧くださっている方、ご支援くださる方には、重
スポンサーサイト

Category: 経済

Thread: 政治・経済・社会問題なんでも

Janre: 政治・経済

tb 0 : cm 2   

コメント

民間も失敗はするけど、自浄が働きます。例えば、油断した企業は倒産する、などです。
役所は倒産しません。しかも日本の官僚は選挙で地位を失うこともないので、自浄作用が働きにくいです。アメリカのように政権交代で官僚も入れ替えるならまだマシかもしれませんが。
 麻生はリーマンショック後の厳しい時期に消費税増税を言い出して、消費を萎縮させ、不況を深刻化しました。
 時期の問題だけではなく、日本の伝統を壊す、増税と大きな政府を進める政治家ですから、麻生氏が財務大臣であることは、安倍政権の最大の欠点です。

トミー #/5lgbLzc | URL | 2013/08/12 08:23 [edit]

Re: タイトルなし

トミー様、コメントありがとうございます。

いただいたコメントへの返答は、こちらにまとめて記事にいたしましたので、よろしくお願い致します。
『トミー様よりいただいた一連のコメントに対する返答』http://shooota.blog.fc2.com/blog-entry-93.html

後藤真(おーじ) #- | URL | 2013/08/13 23:47 [edit]

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://shooota.blog.fc2.com/tb.php/91-4353a73e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)